開発援助の現場から第5回 タンザニア:農業研修プロジェクト評価
2004/08/01
板垣啓子(GLMi会員)
農業はタンザニア国の重要な基幹産業であり、人口の多くが農業従事者です。今回訪問したのは、日本が20年以上協力を行ってきた地域で、以前は、政府の技術者や普及員を対象とした支援が中心でしたが、現在では、地域の中核農民の育成に力が注がれています。普段、教育・研修の機会が少ないため、中核農民に選ばれ、プロジェクトから研修を受けた農民は、それをとても誇りに思い、習得した技術を自ら実践するだけでなく、他の農民にも積極的に教え始めています。自分で作った簡単な農機具と、きれいに条植えされた田んぼを見せてくれた農家の女性は、「収量が信じられないほど増えたんだよ」と、とても嬉しそうに話してくれました。
タンザニアに対する援助については、現在、個別のプロジェクトではなく、包括的な財政支援を推進する議論が世界銀行を中心としたドナーと中央政府との間で盛んに行われています。その一方で分権化や行政改革に向けた取り組みは思うように進展せず、末端の農民のレベルでの援助効果はなかなか見出しにくい状況になっています。このような中で、一緒に農家を訪問した調査チームのメンバーが言った「開発のリアリティは首都ダルエスサラームにもドナー会議のテーブルにもない、農民の生活と生産の場にこそある」という言葉はとても印象的でした。