フィリピン経済は近年好調であり、今後中進国入りする段階であると言われています。一方で、いわゆる「貧困ライン」以下で生活する人口は2割近くあるため、貧困削減と所得格差の是正が大きな課題です。ルソン島北部の低地稲作地帯は貧富の差が激しい地域であり、少数の富農が大規模な農場を経営する一方、零細農民は条件の悪い僅かな土地を耕しています。零細農民は生活費を賄えないために、収支の不足分を高利貸しから借金をすることになり、多額の借金を抱えてしまうという悪循環から抜け出せない貧困状態に陥っています。
GLMiは、2012年から、農業機械のマイクロ・レンタル事業(ARMLED)を進めています。フィリピンは世界でも有数のお米の消費国であるにも関わらず、国内で農業の機械化が進んでおらず、米の生産性が低く、米の自給ができていません。生産性をあげようとしても、小規模な稲作農家の場合、ハイリスク・ローリターンな顧客であるとみなされ、既存の農機レンタルサービスへアクセスできずにいました。ARMLEDでは農業機械の低利子レンタル等を通じて、生産性を上げ稲作農民の収入の向上につなげることを目指しました。一方で、ARMLEDを実施する中で、十分に収入を向上させるためには、営農改善の必要性が高いことが明らかとなりました。そのため、GLMiは、I-FARMを行うことにしました。
営農改善の面から、農民の収入の増加を目指しているI-FARMでは、稲わらやもみ殻を肥料として有効活用する有機肥料製造技術、裏作で育てる野菜栽培を指導しています。これらの指導においては、2012年3月から2015年3月にかけて実施した有機農産物のアグリビジネス(SILFOR)で培われた技術を活用しています。プロジェクトで実施する研修では、SILFORにおいて設立した生産・販売者組織「Vizcaya Fresh! Organic Adovocates, Inc.」(VFI)の協力を得ています。
農業訓練協会(Agricultural Training Institute)や町役場農業課(Municipal Agricultural Office)と協力して、適正な品種の選定、田植え時期、効率的な施肥・病害虫防除など、収量向上を目指した技術研修を行っています。ATIのマニュアルを活用し、肥料や農薬の使用量・回数を減らしてコスト削減につなげることを検討しています。
加えて、裏作を行い収入の向上につなげるために、専門家による野菜などコメ以外の作物の栽培指導をしています。
また、稲作で発生する稲わらやもみ殻を有効活用した有機肥料製造技術研修を行い、低コスト化の方法、肥料の具体的な用途や使用方法などについても指導しています。
多くの零細農民が、未だ人力や蓄力に頼っています。農業機械の利便性や効率性、コストを理解してもらい、より身近なものとして利用できるよう、専門家による機械の説明や操作方法について指導しています。さらに、多くの農民が収穫した籾を道路で乾燥させており、鳥や通行車両により収穫物ロスが発生しています。籾乾燥場などの施設の利用し、ロスを防ぐよう促しています。