GLMiは、2011年3月からネパールプロジェクト立案に向けて事前調査を行ってまいりました。調査を通して見えてきたのは、ネパールの農民が直面している課題と、彼らのあふれる熱意でした。
首都カトマンズの喧騒を一歩離れると、田園風景から丘陵地域を経て、雪を被ったヒマラヤ連邦までを一望できる雄大な景色が広がります。美しい自然を擁するネパールですが、山岳地帯の内陸国である地理的な制約、電力、道路、灌漑などのインフラ不足、長引く政治体制の混迷などの課題を抱えており、南アジアでも最も所得水準の低い国に止まっています。ネパールでは総人口の6割強が農業に従事しており、またGDPに占める農業セクターの割合は3割と、農業が主要産業の一つになっていますが、急峻な地形が多い中、灌漑設備や農道などの農業インフラの整備も遅れており、生産性は低く、農業を生業とする人々の収入も低水準に止まっています。農業で生計を築くのが困難な中、若い世代を中心に出稼ぎに出る人々が増えており、海外からの送金はGDPの約2割を占めるまでになっています。働き盛りの若い世代が海外に出てしまうことでさらに農地の荒廃が進むという悪循環になっており、主要産業である農業の生産性を上げて、人々の収入の向上を図ることはネパールの大きな課題のひとつとなっています。
住民の大半は傾斜地の狭い農地を開拓して生活の糧を得ていますが、これまで技術普及を十分に受ける機会がなく、生計向上に繋げるためには、市場を意識したより生産性の高い作物の導入や技術改善の余地があります。また、農地開拓や森林伐採による土壌侵食も散見されています
GLMiは、農業を生業としながら厳しい生活に直面しているクセスワ・ドゥムジャ村の人々の生計向上に貢献したいとの思いから、住民のニーズについて学ぶ集会を開催しました。住民は厳しい環境の中でも何とか自分たちの愛する土地で、自分たちの手で生活を改善したいという熱意にあふれ、「マンパワーとエネルギーにあふれているが、活用方法がない。技術的で商業的な農業を導入してエネルギーを注ぎたい」「シンズリ道路ができたことで、これまで夢にも思わなかったカトマンズ市場へのアクセスが可能になった。これから市場を意識した栽培技術を学んで生計を向上させたい」といった意見が上がりました。
シンズリ郡の丘陵地域で、トマトやミカン、高地野菜など、土地に合った農産物栽培の技術支援を行っています。また、土壌の栄養状態の改善を目指した堆肥作りや、小規模灌漑の設置など、現地で持続的に農業を行うための環境整備を行っています。
また、そうした様子を見て周辺の住民が自発的に栽培を開始するなど、地域コミュニティに生産技術が根付き始めています。さらに、家畜飼育・ミルク生産技術の支援も進んでいます。乾期の飼料購入コストを下げるため、サイレージ(飼料作物の長期保存技術)研修を行いました