フィリピン有機農業プロジェクト

SILFOR
フィリピン、ルソン島中部のヌエバ・ビスカヤ州で、環境にやさしい農法で生産された有機・減農薬野菜を販売し、農民の生計向上を目指しています。「Vizcaya FRESH!」を通したファーマーズマーケットもフィリピン各地で開催し、環境・農民・消費者のみんなを有機野菜を通して幸せにするお手伝いをしています。

背景

GLMiは、違法伐採や焼き畑が横行し、深刻な環境劣化が起こっていたヌエバ・ビスカヤ州で、2008年から参加型森林管理のプロジェクトを行い、環境にやさしい農業を推進してきました。

ヌエバ・ビスカヤ州の環境問題

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ヌエバ・ビスカヤ州は、フィリピン最大の流域であるマガット・カガヤン川の最上流域にあたります。マガット・カガヤン川は、フィリピンでも最大級の穀倉地帯に水を供給し、国内の食糧自給や経済の安定化に重要な役割を担っています。しかし、戦後の無節操で大規模な森林伐採と、その後に続く無計画な農地開発などにより治水機能が低下し、洪水や河岸施設の崩壊などの被害が顕著になっています。その結果、農業生産性が低下するという悪循環が起きています。

 
このような状況に対し、フィリピンの環境天然資源省(Department of Environment and Natural Resources:DENR)は、参加型村落林業政策(Community-Based Forest Management program : CBFM)を打ち出し、自然資源荒廃の現状を改善しようと試みました。CBFMでは、荒廃の激しい公有林地の適正な管理を行うために、林地内や周辺に居住して林地を利用している住民に対し、住民組織を通じてその利用権を与えます。住民は自ら林地管理団体を作り、組織活動を通じて、森林資源を利用しながら自主的かつ持続的に植生回復と林地管理に取り組むことが期待されていました。しかし、住民組織に林地を管理する能力が不足していることに加え、住民組織を支援するはずの政府や公共団体が弱体であるという状況のため、なかなか問題の解決は進みませんでした。

参加型森林開発プロジェクト(2008年~2011年)

GLMiは2008年より、外務省日本NGO連携無償資金を受け、フィリピン、ヌエバ・ビスカヤ州における住民参加型森林管理支援プロジェクトを実施しました。このプロジェクトは、現地NGO、政府と協力し、バランガイの住民を中心とした、環境保全を目的とする等高線耕作の定着、小規模灌漑施設の整備、森林環境に対する啓発等、持続可能な農業・森林管理技術の普及を行い、森林保全強化の取り組みを進めました。

活動内容

2011年の参加型森林管理プロジェクトの実施中から、「どうしたら環境にやさしい暮らしを人々が継続していくことができるか?」を考える中で、環境にやさしい農業で生産された有機・減農薬野菜を販売し、農民の生計を向上させる必要性を感じ、現在は豊かな暮らしと環境の両立を目指したプロジェクトを実施していました(助成:外務省日本NGO連携無償資金協力)。認証制度「Vizcaya Fresh!」を通したブランディングや、ファーマーズマーケットの開催を通して、環境・農民・消費者のみんなが満足できる農産物の販売体制をつくりだしました。

生産、流通、販売インフラの整備

プロジェクト1年目は、灌漑設備の整備、雨除けビニールハウスの建設、生産された農産物保管のための冷蔵庫の購入といったハード面の整備に加え、有機堆肥や有機農薬の生産方法普及のための研修を行い、有機・減農薬農産物の生産に必要な基盤を整えました。また同時に、農産物販売のネットワーク構築も始めました。

「Vizcaya Fresh! Organic Adovocates, Inc.」の結成と実施体制の構築

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1年目に基盤が整った後は、有機・減農薬農産物の販路を都市部で開拓していきました。首都マニラやルソン島中部の都市バヨンボンでファーマーズマーケットを定期的に開催しました。これらの生産・販売活動を効果的に進めていくため、2013年7月には生産・販売者組織「Vizcaya Fresh! Organic Adovocates, Inc.」(VFI)を設立しました。

 
また、地方自治体や大学と協力し、参加型有機認証制度の構築し、2013年9月から正式に運用が始まりました。こうしたプロジェクトの取り組みは州内外から注目を集めており、農業省主催のNational Organic Agriculture Conference(農業省が開催した全国規模の有機農産物・有機関連商品ビジネスのカンファレンス)や、有機農産物販売促進イベントでの講義および展示販売にも招待された他、新聞等にも取り上げられました。

VFIの強化と本格的マーケティングの展開

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3年次のSILFORでは、サンチアゴとヌエバ・ビスカヤ州のソラノにVFIの店舗を1つずつ展開し、マニラの一等地マカティでの日曜市にも訪れる常連客が増えてきました。また、農民に認証の研修を行ったり、ビジネス計画や運用マニュアルを整備したりしました。さらに、プロジェクト終了後を見据えて、マーケティングやビジネスのできる人材の育成や、現地行政とのネットワークを構築し、ソーシャルビジネスの基盤をより強化しました。その結果、現地行政機関と良好な関係構築に成功し、有機農業関係のほとんどのイベントに招かれ参加することができました。
その結果、3年次における出荷有機農産物および農家の収入は、2年次までの4倍に上がりました。生産者は11村で約150人、毎月約30~40種類以上の野菜3トン以上を約37万ペソ(100万円超)で売り上げることができるようになりました。
プロジェクトは2015年3月に終了し、現在は現地の人々の手によってVFIは運営されています。GLMiは、独り立ちをしたVFIの活動を引き続きフォローし、知識・技術等に関する必要な支援を行っています。