開発援助の現場から第2回 タジキスタン:教育分野調査
2003/08/01
古谷典子(GLMi理事)
今日から向こう10年間、あなたの町にある学校に電気や水がぜんぜん来なくなったとして、その果てに教室がどんな状態になっているかを想像できますか?そんな質問を投げかけたくなる現状がタジキスタンにはありました。1991年に旧ソ連から独立後、約6年間内戦が続いたタジキスタン。中央アジアに位置し、南はアフガニスタンと国境を接しています。学校校舎は崩れ、劣悪な待遇に教員は去り、教科書は不足し、中途退学率は上昇し・・・と途上国に共通した問題が山積しています。
しかし、もともと「持たぬ国」の貧困とはちょっと違う貧困というのでしょうか、かつての「『持てる国』が朽ち果てていくという貧困」との印象が、今回の調査を通じて強く残りました。就学率低下の原因は貧困に深く絡んでいます。例えば「寒さ」。冬には極寒になる地域です。暖房設備はあってももはやそれを動かす燃料のない学校では、防寒具を買えない子どもは凍えてしまいます。また、学校を卒業したところで就職口がない国の社会経済状況では、子どもを学校へ送り出す親たちの意欲も下がってしまいます。
視察先の学校でふと覗いた日本の中学生にあたるクラスでは女生徒は少数派でした(表紙写真)。独立以前は男女とも非常に高い基礎教育就学率を誇っていましたが、男子よりも女子児童の中途退学率が年齢とともに高くなってきています。日曜日の首都ドシャンベの市場では、小学生低学年くらいの子どもたちが、男の子も女の子もたくましく、買い物袋を買い物客に売って小銭を稼いでいました。開発援助に関わる私たちがいつも元気づけられる子どもたちの笑顔がここにもありました。1997年にようやく平和が訪れた後も、問題は根深いようです。7000メートル級の山を持つ美しい国タジキスタンで、寒さに凍えることなく子どもたちが勉強できる環境づくりのために何ができるか一緒に考えてみませんか。