開発援助の現場から第10回 エジプト:上下水道事業
2006/08/01
間宮志のぶ(GLMi会員)
開発援助といえば、アジアやアフリカの低開発国の農村開発や生活改善のプロジェクトを思い浮かべる方が多いかもしれません。そこで今回は、エジプトという「中進国」に対して、どのような支援を行っているかをご紹介します。
エジプトでは上下水道事業は行政機関を通じた公共事業ですが、水道料金の据え置き、余剰人員等の影響で事業経営が逼迫し、大規模な改革が求められていました。その結果、1990年代後半からは米国国際開発庁(USAID)等の支援を得て、企業理念を取り入れた水分野の行政機構改革(セクターリフォーム)が展開されています。全国26県のうち14県において県庁直轄だった水道公社は資産保有会社(Holding Company) 傘下の関連会社に移行しています。日本の技術協力の支援対象候補である県においても県庁直轄であった水道公社は水道会社として再編され、効率的な事業運営を目指した取り組みが行われています。いわゆる親方日の丸で続いてきた公共事業の構造改革とでもいうのでしょうか、余剰人員(それも職員の平均年齢は50歳代)を抱えながらも人員削減はできず、また水道料金は著しく低いにも関わらず料金改定は望めない状況の中で、どうしたら経営改善が成し遂げられるのか?立ち向かう課題はとても複雑で難解に思えます。
エジプトのような中進国に対する開発援助では、このような公的機関の組織改革、経営改善にかかる支援も増えてきています。ここでは公共セクターの民営化や成果重視の事業運営などで活躍し、大規模な構造改革を乗り越えてきた日本のビジネスマンの方々の手腕が大いに生かされる場ともなりえるのではないでしょうか。