2012/11/09
本企画はインターン、ボランティアを中心に立ち上がったみんなのキャリアパス実行チーム、略して「みんパス チーム」による 参加型企画です。彼らの自主性を尊重し、インタビュー対象者の選定やインタビューのまとめ方も「みんパスチーム」メンバーがそれぞれ行い、回ごとにまとめ 方が異なる場合もありますがご了承ください。また、インタビュー対象者も実名掲載の方、匿名希望の方などいらっしゃいますがこちらもご了承頂けましたら幸いです。
本企画は2011年3月までを予定しておりますが、好評であればその後も継続できたらと考えております。「みんパスチーム」に参加したい方はぜひ事務局までお問い合わせください!
「みんなのキャリアパス」第9回目となる今回は、「世界を変えるデザイン展」の企画を担った株式会社Granmaでご活躍されている山本尚毅さんです。
山本さんは大学生の頃、農業経済学の教授とのやりとりをきっかけに幼い頃から興味を持っていた『飢餓』への関心がより一層と高まり、休学をしてアジア・オセアニアへ旅に出られます。そして、帰国後に某システム会社に就職され、その後株式会社Granmaの社長である本村氏との出会いをきっかけに、いよいよ国際協力の世界に飛び込まれました。今回の記事では、山本さんがそれらのキャリアを経られる過程で、「一体何を考え、何を感じたのか」を中心に語って頂きましたので、どうぞご参考にして頂ければ幸いです。
山本 尚毅
株式会社Granma http://www.granma-port.jp/
学歴・職歴
02年3月 石川県立小松高等学校卒
07年3月 北海道大学農学部農業経済学科卒
07年4月 システム会社勤務
08年~ 本村拓人氏(現Granma CEO)とプロジェクトを立ち上げる
09年8月 ㈱Granma 入社
学生時代はとにかくスノーボードにのめり込んでいた山本さん。物理が苦手で志望していた建築学部に入れず農学部に入学するが、当初はなかなか学部の授業に関心がわかなかったという。幼い頃に見た三人に一人が食糧難で亡くなっているというAC(公共広告機構)のCMでの印象から『飢餓』という問題は昔から関心があったそうだ。ある農業経済学の授業で教授に質問をする機会があり、「世界の食糧は足りていないのではないか。」と聞いたところ、「いや足りている。むしろ余っているぐらいだ。必要なのはそういった食糧を行き渡らせる仕組みづくりだよ。」という教授の返答は、当時の山本さんの考えを一変させることとなったそうだ。
という疑問が湧くと同時に、今の大学生活になにか変化を与えたかった。周りの休学放浪者の存在も山本さんを後押し、『飢餓』というテーマでのアジア・オセアニアの旅に出ることを決意する。休学を反対する両親の承諾を得るために両親の前でプレゼンもした。そんな熱い思いが山本さんを動かしていた。
旅からの帰国後、飢餓に対してただ傍観者でしかない自分に歯がゆさを感じつつも、就職活動に突入。自身の専攻である農業経済学を活かせる職場が分からず苦労したと言いつつも、山本さんは意外にも当時を楽しそうに振り返る。
「上京してみたら、周りにすごく色々な人がいて驚いたよ。在学中に起業してしまう人もいれば、学生団体の代表をやっていた人がたくさんいた。」そうした刺激的な出会いが山本さんに働く楽しさを気づかせてくれた。山本さんは、システム会社に就職後も環境システム系のインターンシップに参加するなど積極的に動いた。その結果、また新たな刺激的出会いに遭遇することになる。現Granma社長の本村拓人さんとの出会いだ。この頃、社会企業家という働き方に興味を持っていた山本さんは、本村さんの『貧困とはイマジネージョンの枯渇である』という考えに共感するだけでなく、これこそがまさに自分がやりたいことではないかと感じ、Granma立ち上げに協力することになる。
山本さんはGranmaでは主に日本企業を相手に、仕事の受注担当をしている。自身のGranmaでの役割をカタリスト(※)と自称している。
「バラバラでは価値がないが、つなげることができれば価値になるものがたくさんある。」
(※)カタリスト=触媒 とは化学反応の反応速度を速める物質を意味する化学用語です。
既存の枠組みに囚われず、価値と価値をつなげあわせようと果敢にチャレンジしていく姿勢を山本さんは崩さない。昨年夏には、Granmaを象徴するイベントの一つになった*『世界を変えるデザイン展』の企画、運営に携わった。山本さんは以前からデザインに大きな可能性を見出していたおり、気になりすぎて独自にデータベースまで作り上げてしまうほどであった。「モノの裏には考えや思想がある。そういった考えを発信できる場を作りたかった。」本村さんにこの話を持ちかけてみると、「おもしろそう」と実行へ移すことに。こうして『世界を変えるデザイン展』は始まり、実現したのだそうだ。
『世界を変えるデザイン展』とは、発展途上国にて様々な生活者の課題を解決するために、実際に使われているプロダクトを紹介する展示会のこと。2010年5月から6月にかけて開催された。
感じた思いや問題意識は即実行に移す。山本さんが日頃から心掛けていることのひとつだ。『世界を変えるデザイン展』にはまだまだ改善の余地があり、「アイデアを形にできたのは良かったと思います。今回は場づくりに精一杯で、実際途上国の人たちにはなにもやれてない。まだスタートラインに立っただけです。」と山本さんは話す。
『価値の化学反応』を起こそうと言わんばかりに山本さんは今も楽しく働いている。
「一緒にやりたいな。今って国際協力の境目が曖昧になってきていると思う。それはむしろ君たちにとってはチャンスかもしれない。入口が違うだけで目指すところは同じ。自分はなにをしたくて、なにを形にしたいのか常に考えることが大切なんじゃないかな。」
「“国際協力”という言葉が何を指しているかの”よくわからなさ”が、その境界があいまいになってきていることを示している」というお言葉が非常に印象的でした。
そしてこれまでの国際協力の枠組みに囚われない形での取り組みを追求することの面白さ、可能性の大きさを改めて感じる時間となりました。次のGranmaの取り組みを本当に楽しみにしております。
お話を伺いながら、今様々な方面から出てきている国際協力を仕事にする動きを肌で感じ取ることができ大変有意義な時間を過ごすことができました。国際協力分野において、どういったキャリアパスを描くかということよりも、自分が本当にやりたいことを探し、描き続けることが重要なのだと実感しました。山本さん、ありがとうございました。