開発援助の現場から第15回 フィリピン:国際協力とワークライフ・バランス

2013/09/01

相馬真紀子(GLMi理事/プロジェクト・マネージャー)

子連れのフィリピン駐在

3度目のフィリピン駐在も半年が過ぎようとしています。1度目は独身、2度目は結婚間もなく、3度目は子連れでの駐在です。よく、「お子さんをそんなところ(感染症が多くて、インフラや病院もしっかりしていないド田舎)に連れて行くの、勇気ありますね」と言われます。実際、多少は勇気が要りました。
3歳になったばかりの子どもを置いて駐在するという選択肢は初めからありませんでしたが、半年たって思うのは、「子どもを連れてきて大正解」ということです。フィリピン人は、老若男女問わずとにかく子どもが大好きで、息子のことも本当にかわいがってくれるので、とても助かっています。また、就学前の貴重な時期にこういう異文化に触れることは、息子にとってもいい刺激になっていると思います。フィリピン人のお友達もたくさんできました。心配された病気ですが、幸いにも息子は、半年間風邪もひかず、お腹もこわさず、マイナートラブルさえなく、本当に元気いっぱいです。
フィリピン人のお友達と仲良しになった息子

仕事とプライベート?

国際協力の世界に足を踏み入れてからは、ほぼ一貫して「自然と人間の暮らしを取り持つ」ことを目指して、森林管理や農業などの分野で仕事をしてきました。「自然と人間の暮らしを取り持つ」ことは、私の人生の目標でもあるので、こういう仕事をとおして国際協力できることは、私にとってとても自然なことだし、とても幸せなことだと思っています。
私生活においても有機・自然農法や有機中心の食生活を生活の軸としているため、仕事とプライベートの線引きは、私の中では曖昧なことも多いです。2007年の結婚と2010年の出産を経て、私のキャリアは私だけの問題ではなく、家族としての「あり方」に大きく影響するようになりました。よく、「ワークライフ・バランス」と言われますが、私にとっては、バランスを取ろうとすればするほど、「ベスト・バランス」が見つからないことに苛立って空回りしてしまった気がします。人それぞれだと思いますが、私には「バランス」という言葉を上手く捉えきれなかったのかもしれません。

自分なりのこたえ

国際協力の仕事はやりがいがありますが、とても大変です。海外赴任や出張がつきものですから、子どもがいるとなおさらです。一時期、仕事とプライベートをしっかり分けて生活にメリハリをつけようと努力したこともありますが、元々器用でない私には、それは非常に苦痛な作業でした。メリハリをつけようとしては、どちらも中途半端な気がして悩んだこともあります。
そんな経験を経て私は、ワークとライフの「バランス」にこだわるというよりは、自分らしい生き方について考えるようになりました。私はどんな風に生きたいのか、と考え、私のアイデンティティを大切に生きようと思いました。「自然と人間の暮らしを取り持つ」ために仕事をすることも、仕事と私生活がちょっと曖昧な生活を送ることも、そんな生活の中で子育てをすることも、すべて自分そのものなのだ、と受け入れるようにしました。そうやって受け入れることで、自分らしさを取り戻すことができたような気がします。
今国際協力の現場でこうして働くことができるのも、GLMiの上司や仲間、そして、一緒に歩んでくれる夫と小さなからだで精一杯頑張ってくれる息子のお陰です。まわりへの感謝を忘れず、これからも、「自然と人間の暮らしを取り持つ」ために活動して行きたいと思います。
マーケティング組織立ち上げ式にて/州知事(中央)
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